介護者のメンタルヘルスケア
介護保険制度も改正され、本格的な高齢化社会の到来の前に、在宅介護を国の方針として推進していこうという流れが見受けら
れる昨今です。
しかし、在宅介護というのはたとえ要介護度が低くても介護者を心身ともに疲弊させるものです。
とくに注意したいのがメンタルヘルスケアです。介護者の心の負担を少しでも軽減するにはどうすればよいのでしょうか?
◆ 自分の世界を持つことも大切にする
兄弟姉妹がいる中で介護を引き受けようと考えることができるのは、それだけでも優しく真面目な傾向がある証拠です。
しかし、その優しさ、真面目さで自分を追い詰めてしまう危険があるのもまた事実です。
介護に全力で取り組もうとする人ほど、鬱を発症しやすいという調査もあります。
一生懸命になるのは悪いことではありませんが、自分を追い込むほどのめりこむのは決してよいことでもありません。
もしも可能ならば仕事も続けるようにすることをおすすめします。
介護休業法なども整備されていますし、利用できるものは何でも利用しましょう。
仕事と介護を両立することが難しいようであれば、せめて週に1日でもボランティア活動や趣味のサークルに参加するようにし
ましょう。
1対1の関係だけを続けていると、どうしても激しい思い込みなどが生まれがちで最悪の場合には事件にまで発展してしまう例も
あります。多彩な人間関係を外部に構築し、適度に息抜きするようにするようにしましょう。
介護とは関係のない人間関係、自分なりの世界を持ち続けることは想像以上に大事なのです。
◆ 時には感情を爆発させてもいい
認知症患者のための介護マニュアルなどには「失禁などの異常行動をしても怒ってはいけない」と書いてあることがほとんど
です。
確かに認知症患者を叱っても、学習によって事態が改善されるわけではありません。
それどころか、失敗した意識のない認知症患者も多く、感情のぶつかり合いになってしまうことも多々あります。
しかし、実際のところたびたび失禁や異常行動をされて頭に来ないわけがありません。
負の感情を溜め込み過ぎても心のバランスを崩してしまいます。時には思い切って感情を爆発させることも大事です。
ただ、怒り方にはポイントがあります。
認知症患者の中には失禁などを嘘でごまかそうとする人も少なくありません。
証拠をつきつけて理詰めでつめよっても理解されることはないばかりか、お互い平行線のままでしょう。
「ダメでしょう!」「やめて!」「本当に頭に来る!」など、短い言葉で感情を吐き出したら、後は忘れるようにすることも
大切です。
◆ 外部のサービスをできるだけ利用する
国の政策として在宅介護をすすめてはいるものの、それはあくまでも要介護度が低い人が対象です。
もし、要介護度がすすんでしまったら施設にお願いしようと考えることは罪ではありません。
真面目な人ほど「最後まで看取るのが使命」などと考えがちですが、プロの手にまかせた方が高齢者の心身もかえって安全と
いうことも多々あります。
いざという時にお願いする施設を考えておいても、それは悪いことではないのです。
不測の事態への備えはしつつ、日々の心配はしすぎないというのも介護者のメンタルヘルスのためには必要です。
認知症が進行したらどうしよう、肺炎になったらどうしよう、骨折から寝たきりになったらどうしよう等・・・
介護の心配というのはつきることがありません。
しかし、心配したからといって事態がよくなるわけでもないのです。
もしもの時が来たら、それはその時に考えることにしようと心を切り替えることも大事です。
同じように介護の悩みを抱えている人と思いを共有するのもよいでしょう。
もしも心が悲鳴を上げそうならば早めにSOSを出すことも大切なのです。